「我が道」を究めたい!

誰に何と言われようともやめられないこと、こだわっていることについて徹底的に掘り下げます。

〖乗車記〗サンライズ出雲91号の15時間は快適そのもの

サンライズの臨時列車で多客時にのみ運行されるサンライズ出雲91号のシングル個室で終点の出雲市まで乗車しました。乗車時間や停車駅が定期列車と大きく異なるなど特徴があって人気があり、予約は大変でしたが15時間の旅を大いに楽しむことができました。日本唯一の寝台列車は残さなければなりません。

運転日は大型連休の前後だけ

東京駅と出雲市駅を結ぶサンライズ出雲には年末年始・ゴールデンウィーク・お盆の時期に限って運行される臨時列車があり、下りがサンライズ出雲91号、上りがサンライズ出雲92号と呼ばれています。

サンライズは通常はサンライズ出雲の上り下り、サンライズ瀬戸の上り下りの計4編成で運行されていますが、故障や点検に備えて出雲の車両基地にもう1編成待機しており、多客期にはこれが臨時列車として投入されます。

大型連休前に予備の1編成を出雲から東京に運び(92号)、連休がスタートすると帰省客を東京から出雲に運びます(91号)。連休の最後には今度はUターン客を出雲から東京まで運び(92号)、役目を終えた車両を出雲の車両基地に返します(91号)。

つまり最初の92号と最後の91号は本来の意味は回送電車であり、「空で運ぶのは芸がないから客を乗せよう」という程度の意味しかありません。しかし年に数回しか運航しない希少性と臨時列車ならではの様々な特性があり、鉄道ファンにとっては定期列車よりも人気であるといいます。

臨時列車ならではの特性

サンライズ出雲91号が記された行先表示板

サンライズ出雲91号は東京駅を22時21分に発車して翌日の13時7分に出雲市に到着するため、乗車時間は何と約15時間ということになります。通常のサンライズ出雲が約12時間なので3時間長くかかるのですが、逆に言えばあの快適な車内で3時間余計に過ごせるとも言えます。

姫路に5時25分に到着するサンライズ出雲に対してサンライズ出雲91号は大阪に6時4分着となるなど全体的にゆったりとしたダイヤになっています。日が昇ってから過ごす時間が断然長いので、その分だけ車窓を楽しめそうです。

定期列車と違ってサンライズ瀬戸を併結しておらず、岡山駅での切り離し作業がありません。長時間停車する駅はないようなので、弁当やドリンク類を途中駅で補給することはできなさそうです。

既存の列車の合間をぬって運行している臨時列車であるため、特急でありながら途中で他の特急に抜かれるということもあるようです。

発売開始と同時に予約した

サンライズ出雲91号の存在を知ったのは今年の3月頃で、ネットで検索してみると何とゴールデンウィーク前後の4月30日と5月5日にも運航される予定になっています。5月5日出発ならスケジュールも何とかなりそうですが、サンライズのチケット入手に油断は禁物です。なんやかんや理由をつけて4月5日に仕事を休み、いつも利用している長津田駅みどりの窓口に向かいました。

朝日が昇る中で瀬戸大橋を渡るというフィナーレがあるサンライズ瀬戸に対し、サンライズ出雲は進行方向右手に見たい箇所が集中しています。そのため進行方向右手の2階シングルを狙うことにします。

長津田駅のみどりの窓口にできていた行列

9時40分ごろに到着すると既に行列ができていて度肝を抜かれましたが、大半が定期券購入の学生であったためサクサクと進みます。

狙っていたチケット

10時ちょうどに窓口に到達し、狙っていたチケットを入手することができました。

8番線からの出発だった

9番線に入線していた定期列車のサンライズ出雲

5月5日の21時半ごろいつもの東京駅9番線に上がると定期列車のサンライズがすでに入線していました。

臨時列車は8番線からの出発であることを示す電光板

しかし臨時列車のサンライズは8番線からの出発でした。臨時列車はいつもそうなのか、それともこの日にあった地震の影響によるダイヤ乱れのせいなのかはよくわかりません。※臨時列車のサンライズは常に8番線からの発車のようです。

サンライズに乗車する場合はシャワーカードの確保が第一で、そのためには4号車の乗車位置に並ばなければなりませんが、8番線には目印になるようなものが一切ありません。「ホームの中央付近に停車します」というアナウンスから、おおよその位置を予測して入線してくるのを待ちました。

8番線に入線してきたサンライズ出雲91号

入線してきたのは22時ちょうどです。

4号車のドア

サンライズ出雲のシャワーカード

事前の予想がほぼ当たって幸いにも列の先頭となることができ、無事シャワーカードを確保できました。

私の後ろにできていた行列

結構な数の人が私の後方に並んでおり、カードは発車前に売り切れたようです。

9番ホーム上の売店

9番線上の売店は22時まで開いているようですが、8番線上の売店はこの時刻にはもう閉まっています。車内で冷えたビールを飲みたい場合は9番線で購入しておくしかありません。 

サンライズの車両には2種類ある

サンライズの車両には床下にモーターがついているものとついていないものの2種類が混ざっています。。

床下にモーターがない車両

床下にモーターがある車両

床下にモーターがない車両(上)はモーターの分のスペースも客室として利用することができるため広々とした空間を確保することが可能で、A個室やシングルといった料金の高いクラスで使用されています。一方床下にモーターがある車両(下)はスペースが限られるためどうしても室内が狭くなり、またモーターの音や振動のため居住性も悪化します。そのためソロやノビノビ座席といった料金の安いクラスで使用されます。

今回私が利用したシングルの「2号車22番」

今回私が利用したシングルの「2号車22番」とは進行方向右側の2階席で一番手前の個室です。

進行方向右側の個室は貨物列車とすれ違う際の音がうるさくて眠れないという声を聞いたことがありますが、はたしてどうでしょうか。

「シングル個室」とは?

2階席のシングル個室の内部

2階席のシングル個室の内部

シングルの2階席は天井がアーチ型になっており、ベッドの他に簡単なテーブルや鏡が取り付けられています。

ドア付近の土間のようなスペース

ドア付近には土間のようなスペースがあって大きな荷物を置くことができる他、この段差を活かして椅子がわりにすることもできます。

ベッドの脇のスペース

ベッドの脇にはちょっとした荷物を置けるだけのスペースもあります。最初にサンライズを利用した際に車内の自販機がほとんど売り切れとなっていたことに懲りて、ドリンク類は多めに確保しておきました。(最終的に水が1本まるまる残った。)

コンセント

当然ながらコンセントもあります。

ベッドの全長

ベッドの幅

ベッドの全長は194㎝、幅は70㎝ありました。

ベッドから天井までの高さ

床から天井までの高さ

天井の一番高い部分はベッドからは152㎝、床からは182㎝です。これだけあれば15時間をくつろいで過ごすには十分で、ラウンジにはほとんど行きませんでした。

ベッドの上からの眺め

2階席なので目線が高く、窓が天井に向かってカーブしているためベッドに腰かけて壁にもたれた状態でも十分に車窓を楽しむことができます。

臨時列車は停車駅が全然違う

車内を一通り巡ってみると個室はほとんど埋まっており(4号車以外、なぜか各車両で1部屋づつ空いていた。)、ノビノビ座席も8割近く埋まっていました。30分前に出発した定期列車のサンライズと比べて明らかに乗車率が高く、臨時列車の方が人気というのはどうやら本当のようです。

熱海・沼津・富士・静岡・浜松を通過して大阪と三ノ宮に停まるので、車内のアナウンスは自動音声ではなく全て車掌の肉声によるものでした。進行方向右手のためビルの間から東京タワーが見えたのが何とも新鮮に感じられます。

シウマイ弁当とビール

夜も遅いので発車したら即晩餐の開始です。21時過ぎでも東京駅構内の弁当売り場は開いていますが、人気の駅弁はその時間にはすべて売り切れているので、崎陽軒シウマイ弁当をあらかじめ購入しておきました。

横浜に停車すると次は大阪まで停まりません。そのことは十分に分かっていましたが、実際に「次の停車駅は大阪です」というアナウンスを聞くとやはりギョッとするものがありました。

熱海までは定期列車のサンライズでもゆっくり走っている印象ですが、臨時の91号はそれ以上にゆっくりしており、闇の中に白い大船観音がぼんやりと浮かんでいるのも見ることができます。それでも平塚を過ぎるとかなりスピードアップしました。

熱海駅のホーム

「次の停車駅は大阪」といっても乗務員交代や時間調整のための運転停車(ドアは開かない)はちょいちょいあるようです。熱海には20分ほど停まっていました。

「昔ながらのシウマイ」とオールド・パー

この日の最後の締めは独り飲みで、崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」をつまみにオールドパー・シルバーを楽しみました。崎陽軒のシウマイは車内で飲む際のつまみとしては最高なのではないかと思っています。

サンライズ名物の「お休み放送」はありませんでした。

目が覚めたら琵琶湖のそばだった

シングルの寝心地は快適で、貨物列車とのすれ違いなど全く気になりませんでした。

瀬田付近の光景

寝台列車に乗る際に最も心が躍る習慣は目が覚めて外を見る時ではないかと思います。5時過ぎに目覚めた私が最初に外を見た際の映像がまさにこれで、「瀬田」という文字が見えたのでどうやら琵琶湖の近くを走行しているようです。

琵琶湖と瀬田川

まもなく琵琶湖を源とする瀬田川が見えました。

京都駅と京都タワー

京都駅を通過します。

サントリーの山崎蒸留所

過去に一度見学したことがあるサントリーの山崎蒸留所です。酒が主要テーマの一つであるブログを運営する者としてここを見逃す訳にはいきません。

淀川の鉄橋

淀川を渡れば大阪駅はもうすぐです。

大阪駅

大阪駅です。平日なので通勤客の姿がありました。

梅田スカイビル

私にとって大阪を象徴する建物である梅田スカイビルです。

明石市立天文科学館や姫路城も見えた

私は小学校の低学年の時に西宮に住んでおり、それに加えて大学入学以降は定期的に神戸を訪れているため大阪を過ぎると懐かしい光景が続きます。

六甲山に向けて結構な傾斜が続く景色

六甲山に向けて結構な傾斜が続く景色はこの地域ならではのものです。

三ノ宮の阪急

三ノ宮を発車後にないと思っていた「おはよう放送」がありました。「列車はまもなく神戸駅を通過し、東海道本線に別れを告げて下関まで続く山陽本線に入ります」という内容で、通り一遍の台本を読み上げるよりもはるかに印象に残りました。

明石海峡と淡路島

神戸を過ぎて淡路島が見えてくると進行方向左側が俄然面白くなります。幸いにも反対側の21番席が空いていたのでそちらから見ていました。

明石海峡大橋

明石海峡大橋を見終えたらもう左側に用はありません。再び22番の自室に戻ります。

東経135度の日本標準時子午線上に建つ明石市立天文科学館

東経135度の日本標準時子午線上に建つ明石市立天文科学館です。過去2回のサンライズではともに見逃しており、今回こそ見たいと思っていました

姫路城

サンライズからは姫路城は見えないと思っていたのですが、東姫路駅手前の川を渡る際に小さくではありますが見えました。

姫路を過ぎれば岡山まで特に見るようなものはないので、シャワーを浴びに行くことにします。  

特急なのに特急に抜かれる

8時48分に岡山に到着しました。定期列車ではここでサンライズ瀬戸の切り離し作業をするため7分間停車しますが、臨時のサンライズは瀬戸を併結していないので3分しか停車しません。ドアを閉められると大変なことになるため、自販機にダッシュして冷たい飲み物を購入するにとどめました。

倉敷を過ぎると今度は単線の伯備線に入ります。こういう区間を臨時列車が通るということになるとダイヤの調整が大変なようで、すれ違いのための運転停車が途中5回もあり、また特急であるのに後ろから来た別の特急に抜かれるという珍しい現象も発生します。

岡山駅のホームの表示板

岡山駅を8時51分に発車した特急サンライズ出雲91号は14分後の9時5分に発車する特急やくも5号に伯備線内で追い越されます。つまり出雲市に早く着きたければ岡山で後ろの電車に乗り換えればいいということになるのですが、そういうことを言う人はそもそも臨時列車には乗らないでしょう。

山陽本線山陰本線を結ぶ伯備線は常に川に沿って線路が敷かれており、列車はまずは高梁川沿いを走ります。

井原鉄道井原線の高梁川橋梁

まもなく出現するのが井原鉄道井原線高梁川橋梁で、通常は川に対して直角に掛けられるはずの橋がここではカーブしています。新技術を用いた日本でも大変に珍しい橋で、平成5年度の「土木学会技術賞奨励賞」に選定されました。

美袋駅の駅名表示板

美袋駅運転停車し、ここで後から来るやくも5号を待ちます。

サンライズを追い越すやくも5号

特急が特急に抜かれる瞬間です。

伯備線では岡山と鳥取の県境まではひたすら坂を上り続け、県境のトンネルを抜けると一転して坂を下り続けます。

伯耆冨士と呼ばれる大山

平地まで下りきったあたりで右手後方に伯耆冨士と呼ばれる大山が見えてきました。

最後は右手に絶景が続く

伯耆大山駅から山陰本線に入ると中海や宍道湖の絶景が右手に続きます。左側の個室だった前回のサインライズ出雲ではこの辺りからずっとラウンジに座り続けていましたが、今回は全て自室から見ることができ、周囲を全く気にすることなく写真を撮りまくることができました。

中海

米子を過ぎると中海が目の前に広がります。

途中にある島に鎮座する手間天神社

中海と宍道湖は川でつながっており、途中にある島には手間天神社が鎮座しています。

運行されている遊覧船

川では遊覧船も運行しているようです。

宍道湖

松江を過ぎるとサンライズ宍道湖に沿って走ります。

八岐大蛇退治の舞台として有名な斐伊川

八岐大蛇退治の舞台として有名な斐伊川を渡ると15時間の旅もいよいよゴールです。

出雲市駅に停車中のサンライズ出雲

ついに出雲市駅に到着しました。

サンライズに乗って残そう

夜は好きなように食べたり飲んだりして過ごし、目が覚めてからはひたすら窓の外を見ていた旅で、15時間という長旅が全く苦になりませんでした。

最近ではJR東日本の「四季島」、JR西日本の「瑞風」、JR九州の「ななつ星」といった豪華観光列車が何かと話題になっていますが、何十万円もかかるこういった列車に対し、通常の運賃で個室寝台を体験ができるサンライズはやはり貴重な存在です。

今や日本で定期運航している唯一の寝台列車であり夜行列車であるサンライズは何としても残さなければなりません。

皆さん、乗りましょう。