サンライズ瀬戸のシングルツインで高松まで旅してきました。2段ベッドの個室ですが、下段を椅子席に改造することが可能で、上段が寝室・下段がリビングというメゾネットタイプの個室寝台を楽しみました。
日本唯一の寝台列車
サンライズ瀬戸は東京と高松を結ぶ寝台特急で、サンライズ出雲を併結して東京駅を出発し、岡山で切り離してから瀬戸大橋を渡って高松に向かいます。
もともとは東京と宇野を結ぶブルートレインで、宇高連絡船により高松駅で松山や高知へ向かう特急と接続する「四国連絡」という性格を帯びていました。1988年に瀬戸大橋が開通すると高松まで延伸され、現在のように電車化された「サンライズ瀬戸」として運行が開始されたのは1998年からです。
2009年に東京駅発着のブルートレインが全て終了、2015年には「北斗星」「トワイライトエクスプレス」、さらに2016年に「カシオペア」が運行を終了してしまったことにより、今やサンライズ瀬戸・出雲は定期運航されている日本唯一の寝台列車となってしまいました。
「シングルツイン」に乗ることが目的
私はこれまで3回サンライズに乗車し(出雲、瀬戸、出雲91号)、シングルデラックス・シングル(平屋)・シングル(2階)の3種類の個室を体験しました。4回目の乗車の目的はただ一つ、まだ未体験の「シングルツイン」に乗ることです。
シングルツインは2段ベッドの個室で、上段のベッドを折り畳んで部屋を広くしたり、あるいは下段のベッドを解体して座席として使用したりすることもできます。様々な楽しみ方が可能で、昨年6月に初めてサンライズ出雲に乗車した時から目をつけていました。
しかし実質的に2階建ての部屋であることからシングルツインは車両の端にしか設けることができません。
席の絶対数が少ないこともあってチケットの入手は困難を極め、今回初めて確保することができました。
私にとってサンライズ瀬戸は過去3回チケットを購入し、そのうち2回運休になった因縁の列車です。
今回も日本の南海上を東から西に進んでいた台風11号が沖縄付近で突如向きを変え、私が四国に行くタイミングに合わせたかのように北上し始めるではないですか。
幸いにも台風が1日早く通過したこともあってサンライズ瀬戸は運休とはなりませんでしたが、一時はどうなることかと思いました。
今回はシャワーは利用しない
これまでサンライズに乗った際は車内でシャワーを浴びてきましたが、今回は自宅で入浴を済ませておきました。サンライズ瀬戸は出雲に比べて乗車時間が短く、シャワー室が開いているかどうかを確認するために往復する時間が何とももったいなく思えたからで、そのため今回は入線直前にホームに上がりました。
シャワーカード目当ての行列があった以外、ホーム上はどちらかというと閑散としており、夏休みも週末も関係ない9月の水曜日だとこんなものなのかもしれません。
サンライズが入線してきたのは21時26分頃です。
ドアが開いて個室に荷物を運びこみ、売店でビールと水を買い込んで車内に戻ろうとするこのタイミングであっても、シャワーカードの自販機に並んでいる人たちがまだ中に入れていません。
後で様子を見に行ってみるとやはり発車前に売り切れとなっており、女性二人組がショックを隠し切れない様子で立ち尽くしていました。
シングルツインとは
一人用だが二人でも利用可能
今回乗車した2号車11番は2号車の進行方向左手で、後ろから2番目の個室です。朝日が昇る中で瀬戸大橋を渡るというフィナーレがあるサンライズ瀬戸の場合、進行方向左手というのは重要な要素です。
シングルツインは平屋シングルよりも少しだけ天井が高い空間に上下二段のベッドが収められています。
基本的には1人用ですが、別料金を払えば2人でも利用する事が可能で、そのためコップも2人分用意されていました。
ベッドの寸法は上下共通で階段側が幅60㎝・反対側が幅70㎝で長さが195㎝。高さは上段が100㎝、下段が135㎝でした。
部屋をメゾネットタイプにできる
東京駅を発車して車両が揺れだす前に下段のベッドを解体してしまうことにします。
寝具やシーツ類を全てはがしてとりあえず上段に放り上げます。
ベッドの中央部分を取り外し、片方の壁にはめ込みます。階段がついている方の壁が狭いため、逆側にははめ込めません。
隠れていたテーブルが姿を現しました。
テーブルを引き出すと上段が寝室、下段がリビングというメゾネットタイプの個室が完成です。
もともとベッドだった場所がクロスシートとなったことで車窓をより楽しむことが可能になりました。鉄道ユーチューバーの動画を見ると上段を荷物置き場として利用している人が大半ですが、これはもったいないと思います。
上段はどうなっているか
上段には壁際に設けられている幅38㎝の階段を利用して上がります。
階段の中にはコンセントもあります。
階段脇の壁際にハンガーが2つ掛けられていますが、私にとっては上り下りの邪魔になるだけでした。
寸法は下段と同じとはいうものの、上段は心なしか狭いような気がします。落下を防止するための手段が2本の帯だけとは少々心もとないものがありましたが、昔よく利用していた三段式の客車寝台はもっと狭かったことを思い出して自分を安心させました。
上段には収納があり、私は下段の寝具類をここに突っ込みました。
上段のカーテンは下段に設けられたスイッチでも開閉できます。
ベッド脇の隙間から下を見下ろすとこんな感じです。上段が涼しかったのに対し、下段がやや暑かったのがなぜなのかよくわかりません。
サンライズ出雲向け
シングルツインは構造上車体の端の部分にしか設けることができず、しかもよりによって台車の空気ばねの真上に置かれており、そのため揺れはかなりありました。熱海を発車する際に反対側の壁にはめ込んでいた背もたれが外れてテーブルを直撃し、一時的に室内が大変なことになったのもすべてこの揺れのせいです。
下段をリビング仕様にしたことで食事や景色をより楽しめるようになりましたが、狭い階段を使用して上段下段を行き来するのはやや面倒なものがありました。シングルツインは夜が明けてからの時間が長くビューポイントが数多くあるサンライズ出雲向けではないかと思います。
車内はほぼ満席だった
東京駅を発車する前に検札が来たので、早々に崎陽軒のチャーハン弁当とビールで晩餐の開始です。まさか東京駅のホームでサッポロクラシックを入手できるとは思いませんでした。
ベッドの上で胡坐をかいていたシングルの時と違って今回は椅子とテーブルがあり、外を見ながら落ち着いて食べることができます。(シングルデラックスにもイスとテーブルがありますが、窓に背中を向けることになります。)
東京駅のホームは閑散としていたように感じましたが、横浜を過ぎたあたりで車内を巡ってみるとシングルの1階・2階、ソロの上段・下段、シングルツイン、平屋シングル等、驚くなかれ、ほぼ埋まっているではないですか。昨年6月に初めてサンライズに乗った時はシングルデラックス以外ガラガラだった記憶があるのですが、ここ1年で大きく変わったようです。香川滞在中にレンタカー内で聴いていたラジオでも「今夜の東京行サンライズ瀬戸は全て満席となっています。」と伝えていました。
水曜日の夜でこれなのですから週末が絡むともっと凄いことになっているでしょう。どうやらサンライズで人気の個室を確保するには、1か月前の10時にみどりの窓口で行列の先頭にいることが必須のようです。
11時きっかりにお休み放送が流れ、私も本日の締めくくりに移行することにします。
崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」をつまみにジョニ黒のトワイスアップ(1対1で氷を入れない水割り)を楽しみました。
瀬戸内海の眺望を楽しんだ
幸いにもベッドから落ちることもなく、目が覚めたのは姫路を過ぎたあたりでした。
サンライズ出雲との切り離しを行う岡山では例によって多くの人が作業を撮影するために連結部分に集結しています。
乗車しているのがサンライズ出雲だとホーム上で多少ゆっくりできるのですが、サンライズ瀬戸は切り離しが終了すれば先に発車してしまいます。私も早々に車内に戻りました。
岡山を出てしばらくは田園風景の中をゆっくりと走りますが、茶屋町を過ぎて高規格路線に入ると「特急」らしくガンガン飛ばします。
児島に近づくと左手に海が見え始めました。
瀬戸大橋は鉄道道路併用橋で上部が4車線の高速道路で、鉄道の線路は下段の橋げたの中に敷かれています。
この日は曇っていたため「朝日に包まれた島々」は見ることができませんでしたが、それでも瀬戸内海の眺望を楽しむことができました。
橋の真下の海面も見ることができます。
しかし写真ではどうしても橋げたや主塔が邪魔になることが多いので、ノーカット版の動画をご覧ください。(9分47秒です)
瀬戸大橋を渡りきると「讃岐富士」として知られる飯野山が右手に見えてきます。
サンライズ瀬戸は定刻に高松に到着しました。