サンライズ出雲のA個室「シングルデラックス」のチケットを確保し、出雲に到着するまでの12時間をまとめました。広々とした室内を満喫した12時間は夢のようでした。
- サンライズ出雲とは
- A個室のチケットは「10時打ち」でなければ取れない
- サンライズ出雲の設備
- A個室(シングルデラックス)の魅力
- 贅沢な寝台特急旅行
- 目が覚めたら尼崎だった
- 岡山名物の切り離し
- 夢のような12時間だった
- 現地では至れり尽くせりの歓迎だった
サンライズ出雲とは
サンライズ出雲は東京と山陰を結ぶ寝台特急で、東京駅を21時50分に出発し、約12時間かけて翌9時58分に出雲市駅に到着します。14両で東京を出発し、途中の岡山で高松行の7両を切り離します。(上りの場合は岡山で連結して東京に向かう。)
誕生したのは1998年で、時代の流れの中で他の寝台列車や夜行列車が次々と廃止となる中でもサンライズはしぶとく生き残り、2016年以降は日本で唯一定期運航される寝台列車であり夜行列車となっています。
列車内に3段ベッドや2段ベッドが並べられた従来の寝台車と違ってサンライズはそのほとんどが個室となっているのが最大の特徴で、特にA個室である「シングルデラックス」は住宅メーカーと共同で設計したというだけあってゆったりとしたベッドにデスク・洗面台などを備えており、ホテル同然の設備となっています。こういう快適な車内で10時頃までゴロゴロできるというのは素敵じゃないですか。
A個室のチケットは「10時打ち」でなければ取れない
ブルートレインに代表される寝台列車はかつて日本中で運行されており、東京~大阪間の寝台急行銀河など私も何度も利用しました。目が覚めると全然違う場所を走っているというのは独特な気分になるもので、特に新入社員研修の工場実習で九州に向かう際に乗車した寝台特急はやぶさのことは今でもよく覚えています。
上野~札幌間を走った北斗星やカシオペア、大阪~札幌間のトワイライトエクスプレスはその豪華な設備が話題となってマスコミにも取り上げられることが多く、「いつか乗ってみたい」と思っていましたが、「そのうちに」と思っている間に全て廃止となってしまいました。
サンライズが誕生して今年で23年で、JRの特急型電車の耐用年数が25年から35年だそうなのでそろそろ限界が近づいているといえましょう。同じような車両を再び製造してまで運行を継続するかどうかは全く分からず、サンライズ出雲・瀬戸はいつ廃止されも不思議ではない状況のようです。それだったら動いているうちに乗ってしまえです。
新型コロナウィルスの緊急事態宣言発出中ではありましたが、誕生日のイベントということで乗車してみることにしました。どうせ乗るならシングルデラックスです。
5月9日の九時半過ぎに6月8日(誕生日)のチケットを予約しようとしましたが既に満席。それではということで6月9日分を10時ジャストに改めて申し込んで辛うじてチケットを確保できました。コロナ禍という社会情勢においてもサンライズのA個室は人気のようです。
指定券は1カ月前の10時に発売開始となるそうで、端末にあらかじめ必要事項を入力しておいて10時の時報と同時に送信することを「10時打ち」といいます。シングルデラックスのチケットは10時打ちでなければ取れません。
サンライズ出雲の設備
前7両が瀬戸、後7両が出雲
サンライズ出雲は東京駅の9番線から発車します。
ホームに入線してきたのは21時26分頃でした。ホームにいた人の大半がこの時カメラを構えており、そういう列車だったんだなと感じました。
1~7号車が高松行、8~14号車が出雲市行となっています。
岡山で切り離される連結部分です。
内部はこうなっていました。
シャワー室
サンライズ出雲の場合は10号車と11号車にシャワー室が設けられています。(11号室はA個室専用)
B個室の方は10号室に置かれている自動販売機(瀬戸の場合は3号室)でシャワーカードを購入しなければなりませんが、タンクの容量の関係もあって枚数は限られています。コロナ禍のせいかこの日はB個室の乗車率が悪く、その分だけシャワーカードも残っていたようですが(朝には売り切れていた)、通常では東京駅でドアが開いた瞬間に並ばないと入手できないようです。
「シャワールームごあんない」に使用方法が書かれています。
ドライヤーの下のボックスにシャワーカードを差し込みます。ちなみにドライヤーはかなり非力なので人によっては期待しない方がいいかもしれません。
緑のボタンを押せばお湯が出て、赤いボタンを押すと止まります。お湯が出るのは合計6分間で、残り時間が表示されます。
尚、ボディーソープとリンスインシャンプーも備え付けられています。使用後は「シャワールームごあんない」の横の水色のボタンを押すのですが、その際に脱衣所の床を乾燥させるため足元に風が吹きます。
ラウンジ
10号車(瀬戸の場合は3号車)にあるラウンジは通路を挟んで両側に椅子と机が設置されています。
またラウンジの横にはドリンク類の自動販売機も置かれています。ここでよく見るとお茶と缶コーヒーのみ値段が表示されており、他は全て「準備中」です。(翌朝にはお茶も全て売り切れていた。)一旦発車してしまえば車内で飲料水を確保する手段はこの自販機しかなく、これはひどすぎるのではないかと思います。
客席
ノビノビ座席を除いて全て個室です。ドアの脇にダイヤルキーが設置されており、部屋を出る際は4桁の番号と#で施錠され、同じ4桁の数字を入力すると開錠されます。(暗証番号として登録されるわけではないので、出入りのたびに同じことを繰り替えします。)
また個室には全てコンセントがあります。
A個室(シングルデラックス)の魅力
下り列車の場合、シングルデラックス(2階)とサンライズツイン(1階)は全て進行方向左手にのみ位置しています。
そのため右手側の廊下から部屋に入ります。
ドアを開けると正面に大きな鏡と洗面台があります。(「飲料水ではありません」という表示あり)
窓側に設けられたベッドは若干硬めですが、眠るには全く問題はありません。
ベッドの幅が約84センチ。
長さは約195センチでした。
枕元にあたる部分に各種スイッチが設けられていました。ヘッドホンジャックにイヤホンを差し込むとNHKのFMを聴くことができます。
窓にはカーテンも取り付けられています。
ベッドの反対側にはテーブルと椅子がありました。(テーブルの下のボックス内には何やらヒーターのようなものが入っているようで、ここの音は少々気になった。)
ドアには外部を確認するためのドアスコープまでついています。
ちなみに天井の高さは最高部で約188センチ
部屋の奥行きは約153センチありました。私にとっては十分すぎる広さでしたが、背の高い人には狭く感じられるかもしれません。
ちなみにベッドに腰を下ろして壁にもたれ、室内を見るとこんな感じ、
窓の外を見るとこんな感じです。窓が天井に向かってカーブしているため、夜間に室内の電気を全て消すとベッドに寝たままで星が見えます。
A個室には専用のアメニティグッズが置かれており、ホテルのような気分を味わうことができます。
中身はヘアブラシ、T型シェーバー、シェービングフォーム、石鹸、洗顔フォーム、歯ブラシセット、ヘアゴム、綿棒、シャンプー、リンス、ボディソープ、サニタリーバッグ、タオル、ポケットティッシュ、靴磨き用紙のようです。
贅沢な寝台特急旅行
発車まで車内のあちこちを探索していましたが、発車してしまうとともかく検札がくるまで室内にいなければなりません。横浜を発車直後に車掌が現れ、これでようやく車内に正式な居場所を確保できたようで安心しました。ここから先はA個室を存分に楽しむことにします。
テーブルと椅子もあるのでゆったりと食事もできます。時短営業でサンライズの入線時刻に店が閉まっていることが予想されたので(実際は細々とやっていた)事前に入手した崎陽軒のシウマイ弁当とホームで購入したビールを持ち込みました。
茅ヶ崎付近で食事を終えたので、今度はA個室専用のシャワールームに向かいます。日中の仕事で汗まみれになっていたそのままで乗車しており、ようやくこれでスッキリすることができました。(一度帰宅して着替えた際にもあえてそのままでいた。)
さて、まだまだ長い夜が続きます。
景色を見ることができないため、夜間はradikoのタイムフリー機能を使って日中に聴き逃していたラジオ番組を聴いて過ごしていました。私はプレミアム会員であるため列車が丹那トンネルを超えて静岡エリアに入ってもFM TOKYOやニッポン放送を聴くことができます。トンネルに入るたびに途切れるのではないかと心配していましたがかなり長めのトンネルでも大丈夫で、東京~熱海間で途切れたのは1回だけでした。
そして最後の締めは独り飲みで、崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」をつまみに愛用のスキットルに詰めてきたティチャーズハイランドクリームを楽しみました。氷を入手できない列車の中という状況下では飲み方はどうしてもトワイスアップ(1対1で氷を入れない水割り)になり、自販機が売り切れだらけであることに気付いたのはこの時です。仕方なく本来は飲料用ではないはずの洗面台の水を使用しました。崎陽軒のシウマイは冷めていても美味です。
静岡を過ぎたあたりで就寝しました。全体的にかなりゆっくり目に走行しているように感じます。
目が覚めたら尼崎だった
翌朝目覚めるとちょうど尼崎を通過中で、夜間に比べて随分とスピードアップしていました。トイレに行くために廊下に出ると右側には甲山や六甲山に向けて続くなだらかな斜面が窓いっぱいにひろがっています。少年時代を西宮で過ごした私にとって懐かしくてたまらない景色なのですが、いかんせん朝が早すぎます。早々に用を足してベッドに戻りました。
しばらくしてふと窓の外を見ると今度は高層ビル群の中を縫うように走っており、建物の間から神戸港のマリンタワーがちらちら見えます。こうなってはもう寝てなんかいられません。
ビル群を抜けると列車は須磨の海岸線に出ました。
程なくして左手に明石海峡大橋が見えてきました。この辺りでは日本標準時である東経135度子午線が通る明石天文台が右手にあるはずなのですが、外に出るのが面倒だったので諦めます。
ちなみにサンライズ(日の出)は姫路付近で、右手の窓から見えました。
岡山名物の切り離し
6時27分に岡山駅に到着し、サンライズ出雲はここで7分間停車して高松行を切り離します。
のどがカラカラであったのでホーム上の自販機でまず水を確保し、次いで切り離し作業を見に行きました。
先に発車する高松行を見送ります。これができるのは後から発車するサンライズ出雲の特権です。ちなみに岡山で朝食の弁当を買うという方も多いようですが、コロナ対策でホーム上の弁当販売は中止されていました。
夢のような12時間だった
倉敷を過ぎると今度は山陰地方に向けて中国山地を超えていきます。
山陽本線と山陰本線を結ぶ伯備線は常に川に沿って線路が敷かれており、列車はまずは高梁川沿いを走ります。
途中の上岩見駅が最も標高が高くこの辺りが日本海と瀬戸内海の分水嶺となっている旨のアナウンスがありました。
ここまでは川は列車と反対方向に流れていましたが、日本海に向かって流れる日野川は列車と同じ方向に流れています。
米子付近になると右手後方に伯耆冨士と呼ばれる大山が見えました。
中海が見えてくるようになると車窓はもう右方向が圧倒的に面白くなります。しばらくの間ずっとラウンジにいました。
中海と宍道湖を結ぶ大橋川で、手前の島にある鳥居は手間天神社です。
宍道湖が見えてくると長かった旅もあと少しです。
定刻に出雲市駅に到着しました。
こういう夢のような12時間の後に「神々が集う国」出雲で非日常の世界に入るというのは格別です。やはりこのような列車は下りで利用すべきもので、サンライズを下車して「さあ明日から(今日から)仕事だ!」なんてまっぴらです。
出雲にある神社の本殿がどこも大社造りという独特の形状をしているのと同様に、出雲市駅の駅舎も大社造りを模した形状でした。
バス停の屋根ですら斯くの如しです。
現地では至れり尽くせりの歓迎だった
緊急事態宣言発出中の東京から来た旅行客ということで地元の人から迷惑がられることを心配していましたが、予想とは随分と違っていました。
ホテルでは「県外からのお客様へ」ということで日本酒720ml.と米600gが入った手提げ袋がプレゼントされ、またフロントで渡された紙に必要事項を記入して提出すると出雲市発行の2000円分クーポン券が交付されます。ホテルと提携した飲食店で食事をすれば無料で1品付けてくれるなど旅行客にとっては至れり尽くせりでした。
東京へ帰る直前に立ち寄った寿司屋の大将が「こういう時期に来てくれるお客様は本当に有難い」としみじみと語っているように、観光業界は本当に大変な時期であることがよくわかりました。