サンライズ瀬戸で高松まで旅をしてきました。シングルデラックス(A個室)は予約が大変で「10時打ち」が不可避です。それだけに広さと質感は素晴らしく、「大人の秘密基地」で非日常の空間を楽しむことができました。
- 乗って残そうサンライズ瀬戸
- シングルデラックスで不可避の「10時打ち」
- 心躍る9番線ホーム
- 十分すぎるほど広いA個室
- ごった返していた発車前の車内
- サンライズのシャワールーム
- 岡山から高松まで
- 「大人の秘密基地」で味わう非日常の空間
乗って残そうサンライズ瀬戸
サンライズ瀬戸は東京と高松を結ぶ寝台特急で、サンライズ出雲を併結して東京駅を出発し、岡山で切り離してから瀬戸大橋を渡って高松に向かいます。
列車内に3段ベッドや2段ベッドが並べられた従来の寝台車と違ってサンライズ瀬戸・出雲はそのほとんどが個室となっているのが最大の特徴で、テーブルや椅子に加えて洗面台まで完備したシングルデラックス(A個室)から「雑魚寝のできる指定席」ノビノビ座席まで様々なタイプの客席があります。
2009年に東京駅発着のブルートレインが全て終了、2015年には「北斗星」「トワイライトエクスプレス」、さらに2016年に「カシオペア」が運行を終了してしまったことにより、今やサンライズ瀬戸・出雲は定期運航されている日本唯一の寝台列車となってしまいました。
サンライズが誕生したのは1998年ですから今年で25年ということになります。JRの特急型電車の耐用年数が25年から35年とされており、一方で後継車両の開発が進んでいるという話は全く聞きません。サンライズ瀬戸・出雲はいつ廃止されも不思議ではない状況となっており、とにかくみんなで乗って残すしかありません。
シングルデラックスで不可避の「10時打ち」
私が初めてサンライズに乗ったのは新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発出中だった2021年6月のサンライズ出雲で、コロナ禍ということもあったせいかシングルデラックス以外ははっきり言ってガラガラでした。しかし個室寝台という希少性の高さから様々な媒体で取り上げられることで人気が上昇しており、最近ではいつ乗っても満室・満席となっています。
香川では朝のラジオに「各交通機関の運行状況」というコーナーがあり、その中で空席状況も流しています。東京行サンライズ瀬戸は滞在中いつ聴いても満席で、どうやら上り列車も相当な人気のようです。
それでもシングルやソロといった数の多い個室の場合はチケットの入手はそれほど難しくはありませんが、シングルデラックスやサンライズツインといった人気の個室、シングルツインのような数の少ない個室の場合は大変です。発売開始と同時に一瞬で売り切れてしまうため、チケットを入手するためには出発日の1か月前の午前10時(これが発売開始時間)に指定席売り場で行列の先頭にいることが必須です。
いつも利用していた長津田駅のみどりの窓口が閉鎖されてしまったため、代わりに選んだ新横浜駅に到着したのが2月22日の9時30分頃です。申込用紙に所定事項を記入して窓口に出すと「9時55分にもう一回こちらに来てください」と告げられ、ここから10時過ぎまでこの窓口は私専用にキープされました。
職員同士の会話を聞いていると、予約端末に必要事項をあらかじめ入力して10時ちょうどにENTERキーを押すことを「10時打ち」と言うようです。緊張感に満ちた表情の職員の方が奮闘して下さったおかげでシングルデラックスのチケットを確保できました。(もちろん取れない場合もある)
ちなみにこの日は横浜アリーナで乃木坂46のライブが開催されており、最寄り駅である新横浜駅構内は大変なことになっていました。
心躍る9番線ホーム
サンライズに乗るために東京駅9番ホームに上がるときはいつも心躍るものがあります。今回はA個室であるためシャワーカードは確保されており、また事前に弁当も購入しておいたためホームに上がったのは21時26分の入線直前でした。
ちなみにその頃、構内の弁当屋の状況はこう。
シャワーカードを求める待機列はこうなっていました。(サンライズ瀬戸の場合、4号車の乗車口に並ぶのが暗黙の了解)
私が今回利用する4号車24番とは上段の手前から3番目の個室で、奥の方ではシャワーカード自販機に並ぶ人の列がホームにまであふれています。
下り列車の場合のA個室は全て進行方向左手側となっており、通路から個別に設けられた階段を上がって自分の個室に入ります。
十分すぎるほど広いA個室
A個室の室内を見渡すとこんな感じです。ベッドの幅が約84センチ、長さは約195センチでした。また個室の高さは最高部で約188センチ、奥行きは約153センチあり、一人で過ごすには十分すぎるほどの広さです。
A個室には専用のアメニティグッズが置かれています。
中身はこうなっており、A個室専用のシャワーカードも入っていました。
テーブルと椅子があるので、ベッドの上で胡坐をかかなくても食事ができます。
ワイルドな気分で酒を楽しむこともできます。「山やアウトドアで楽しむ」をコンセプトとして作られたバーボン「ティンカップ」にぴったりでした。
ちなみに24番の個室は喫煙可能で、テーブルに吸い殻入れが付いています。(室内に臭いは全くありませんでした。)
ごった返していた発車前の車内
乗車開始直後の車内は自分の個室を探す人、ホームの売店や自販機で最後の買い出しをしようとする人、車内を探検する人でごった返しており、車掌がその間を縫うようにして検札に飛び回っています。「本日は満室・満席です」とアナウンスが繰り返し車内に流されていました。
以前は全く見られなかった外国人旅行客がかなり目立っており、世の中が着々とコロナ前に戻りつつあることを感じます。ラウンジでは発車前に早くも酒盛りが始まっていました。
シャワーカードは早々に売り切れとなり、やはり外国人と思われる一団が諦めきれないという様子で立ち尽くしていました。外国人向けのYouTube動画を見ると「サンライズでは車内でシャワーを浴びることができて快適」ということばかり紹介されていましたが、タンクの容量の関係でシャワーカードは瀬戸・出雲それぞれ20枚に限られています。シャワーを浴びるためには相当早くからホームに上がって並ばなければならないことをもっと強調すべきでしょう。
定刻に発車するとほとんどの乗客はそれぞれ所定の居場所に腰を据えたようで、車内は落ち着きを取り戻していました。
東京を出ると品川あたりまで車窓は進行方向右側がいいようです。何やら東京タワーに見送られているようで、なかなかいい気持ちになることができます。
サンライズのシャワールーム
23時にお休み放送があり、小田原を通過して熱海に向かっているタイミングでシャワーを浴びに行くことにしました。
A個室には専用のシャワー室があり、カードも配布されているので東京駅で列に並ぶ必要はありません。
シャワールームの使用方法は「シャワールームごあんない」に書かれています。
ドライヤーの下のボックスにシャワーカードを差し込みます。
お湯が出るのは合計6分間で、右手にある「あと〇分〇〇秒」残り時間が表示されます。緑のボタンを押せばお湯が出て時計が進み、赤いボタンを押すと止まります。ボディーソープとリンスインシャンプーも備え付けられています。
タオルは無いのでこればっかりは自分で用意してください。
備え付けのドライヤーは笑っちゃうくらい非力なのであまり期待しない方がいいかもしれません。
使用後は「シャワールームごあんない」の横の水色のボタンを押すと使用後のシャワールーム内が洗浄され、脱衣所の床を乾燥させるため足元に風が吹きます。相当な風圧なのでびっくりしないようにしてください。
個室に戻るといつの間にか熱海を出て丹那トンネルに入っていました。明日に備えて早めに寝ることにします。
岡山から高松まで
朝起きると神戸市の垂水付近を走行中でした。春分の日を過ぎて日が長くなってきたといはいえ外はまだ真っ暗で、明石海峡大橋も全く見えません。
5時25分に姫路に到着した時点でもまだ暗いままでした。
明るくなってきたのは5時50分過ぎでした。
おはよう放送が流れたのは6時7分で、毎度のことながら「列車時刻通りに運転しております。」というアナウンスには心強さを感じます。
岡山付近で天気は完全に雨となりました。
6時27分に岡山に到着すると、サンライズ瀬戸と出雲の切り離し作業が行われます。
切り離し作業が完了すると瀬戸はすぐに発車してしまうため停車時間は4分しかありません。ホームに取り残されることになると大変なので早々に個室に戻りました。
サンライズ出雲に乗車した際に撮影した動画を添付しておきます。
児島を過ぎると本来なら瀬戸内海の景色を楽しむことができるはずなのですが、雨のためそうはいきませんでした。
仕方ないので過去の動画をご覧ください。児島駅を発車して瀬戸大橋を渡り、四国に上陸するまでの車窓をノーカットで収録しています。
香川の象徴である「讃岐富士」飯野山も雲をかぶっています。
進行方向左手に讃岐うどんの名店「うどん一福」が見えてきたら高松駅はもうすぐです。
定刻通り高松駅に到着しました。
かつて駅構内にあった「連絡船うどん」は跡形もなくなっていました。
「大人の秘密基地」で味わう非日常の空間
これまで乗車してきたソロやシングルと比べてシングルデラックスの広さや質感は素晴らしいものがあり、約9時間半の旅を存分に楽しむことができました。サンライズ瀬戸は出雲より乗車時間が短く、料金が高いシングルデラックスはもったいないと思ってこれまで敬遠してきましたが、どうやら私の思い違いだったようです。
シングルやソロは最初から最後までベッドの上で過ごすことになりますが、シングルデラックスではテーブルと椅子があり、つかの間ではありますが自分だけの空間を作ることができます。
以前ソロに乗車した際に「子供の頃親に隠れて作った秘密基地」と感じましたが、シングルデラックスは「大人の秘密基地」と言われる書斎のようでした。
またシングルやソロの場合はベッドの上で窓に貼りついて景色を見ることになりますが、シングルデラックスではゆったりと椅子に腰をかけて外を見ることも可能です。今回は天気が悪く景色を楽しむことはできませんでしたが、非日常の雰囲気を味わうことはできました。