サンライズ瀬戸の個室寝台を予約して琴平までの旅をしました。平屋のシングルという大変に珍しい客室で、天井は高いがゆれます。天候にも恵まれた中を渡った瀬戸大橋では朝日に包まれた瀬戸内海の島々の眺望を満喫することができました。
- サンライズ瀬戸とは
- 何もかも特別な琴平延長運転
- 予約は1か月前の10時から
- 平屋シングルは天井が高いがゆれる
- シャワーカードを確保する
- 車内放送チャイムとお休み放送
- 一面の霧とおはよう放送
- サンライズで渡る瀬戸大橋は格別
- 高松駅でスイッチバックして琴平へ
サンライズ瀬戸とは
かつての「寝台特急瀬戸」は東京と宇野を結ぶブルートレインで、宇高連絡船により高松駅で松山や高知へ向かう特急と接続する「四国連絡」という性格を帯びていました。そして1988年に瀬戸大橋が開通すると高松まで延伸されます。
現在のように電車化された「サンライズ瀬戸」として運行が開始されたのは1998年からで、サンライズ出雲を併結して東京駅を出発し、岡山で切り離してから瀬戸大橋を渡って高松に向かいます。2009年に東京駅発着のブルートレインが全て終了、2015年には「北斗星」「トワイライトエクスプレス」、さらに2016年に「カシオペア」が運行を終了してしまったことにより、今やサンライズ瀬戸・出雲は定期運航されている日本唯一の寝台列車となってしまいました。
2014年からは不定期で土讃線の琴平駅までの延長運転が実施されています。
何もかも特別な琴平延長運転
1時間以上余分に楽しめる
サンライズ出雲の場合は10時頃まで快適なベッドでゴロゴロできますが、7時27分に高松に到着するサンライズ瀬戸の場合は岡山あたりで降りる準備を始めなければなりません。旅のクライマックスである朝日に輝く瀬戸大橋を渡り終え、その余韻を感じる暇もなく下車しなければならないというのは少々物足りないものがあります。
延長運転の場合は琴平着が8時39分で、従来よりも1時間以上長く快適な個室寝台の旅を楽しむことができます。
運賃が割安である
サンライズ瀬戸は岡山から瀬戸大橋線・予讃線を経由して高松に到着し、次いで元来た予讃線を逆戻りして多度津から土讃線に入って琴平に向かいます。
そのため乗車する距離としては高松より琴平の方がかなり長いのですが、東京~高松の運賃が11,310円なのに対し、東京~琴平の運賃は11,200円と割安です。どうやら東京~琴平の最短の経路で運賃を計算し、宇多津~高松を往復したことは無かったことにしてくれているようです。
琴平発はない
四国で最も重要な路線は予讃線の高松~松山間で、もちろん首都圏でもよく見るような形式で電化されています。
これに対して高知へ向かう土讃線の電化区間は多度津~琴平間のみで、琴平駅の架線はこれまで見たことのない形状になっていました。これは直接吊架式というシンプルさが特徴の集電方式で、電力の容量という点ではかなり劣っているようです。
サンライズ瀬戸のような長い編成の本格的電車特急が土讃線に入ってしまうと容量オーバーで架線の電圧が下がる恐れがあります。そのため前後を走る列車を電車からディーゼル車に変更しなければならず、サンライズ瀬戸の琴平延長運転はこのように大変に手間がかかるものなのです。
そのため琴平行のサンライズ瀬戸はあくまでも臨時列車での対応で、また上りは全て高松発で琴平発はありません。
予約は1か月前の10時から
二度目の運休のショックもようやく癒え、「そういや琴平への延長運転っていつやるんだ?」と調べる気になったのが8月の中旬です。ネットで検索してみるとまさに実施している真っ最中で、9月25日(土)まで土日祝の前日発というタイミングで運行されているではないですか。
秋分の日の前日である9月22日(水)発が仕事への影響が最も小さいようです。東京の新型コロナ新規感染者が4000人だの5000人だのとなっていたまさにピークの時期で、「不要不急の外出は避けよ」「都県境をまたぐな」といった言葉が飛び交っていましたが、ここを逃せばいつになるかわからりません。8月26日に二度目のワクチンを接種する予定だったこともあって旅立つことを決断し、8月22日に長津田駅のみどりの窓口に向かいました。
9月22日発の切符が発売開始となる10時ちょうどに申込書を書き、窓口に提出したのが10時2分。「進行方向左手のシングルツイン」というリクエストに対して、「喫煙席なら空いています」という回答でしたが、確保しようとすると既に埋まっていました。どうやら窓口の職員とやり取りしている間にどんどん席が無くなっているようで、上段のシングルも全て無くなってしまい、結局確保できたのは1階でも2階でもない平屋のシングルでした。
決して油断していたわけではないのですが、サンライズ瀬戸はガラガラというイメージがあっただけに驚きでした。琴平への延長運転がそれだけ人気だったのか、シルバーウィークを前に全国民が旅に飢えていたのか、果たしてどちらでしょうか。
平屋シングルは天井が高いがゆれる
私が確保した「5号車11番」というのは「ノビノビ座席」がある5号車の端の平屋席で、2階建てであるサンライズの中では大変に珍しい席です。
モーター付きの車両とモーター無しの車両
電車の車両には床下にモーターが取り付けられているもの(上)とそうでないもの(下)の2種類あります。
モーター付きの車両はどうしても車内が狭くモーター音も発生するため、サンライズでは基本的に料金の安いソロとノビノビ座席で使用されており、モーター付き車両に置かれているシングルは全7両の中で2席しかありません。
天井は高いが揺れる
平屋席といっても車内の設備面では通常のシングルと同じです。
最大の特徴はやはり天井の高さです。床からの高さは200㎝、ベッドからの高さは160㎝ありました。
また車輪の近くにあるため、台車に設けられたばねの影響もあって相当揺れます。一方モーター音に関しては私はほとんど気になりませんでした。
ちなみに通常のシングル2階席の場合は床から180㎝、ベッドからは125㎝で、天井がR状になっている分だけ若干圧迫感があります。
シャワーカードを確保する
せっかくシャワー室がある列車に乗るのですから利用することをお勧めしますが、A個室以外は自力でシャワーカードを確保しなければなりません。枚数が限られていてすぐに売り切れとなってしまうため、確実に入手するには東京駅で待機列に並ぶ必要があります。
シャワーカードの自販機は3号車(出雲は10号車)の後方に設置されています。こちら側にはドアがないため、実は4号車のドアが最も近い入口なのです。そのため希望者は4号車(出雲は11号車)の乗車位置に並ぶというのが暗黙のルールとなっているようです。夜9時過ぎにホームに上がると既に一人先客があり、乗車開始時には相当な数の人が私の後方に並んでいました。
サンライズが入線し、ドアが開いてシャワーカードの自販機にたどり着くまでの動画です。方向幕が「回送」から「高松・琴平」に切り替わる2分50秒からドアが開く直前の8分25秒までは飛ばして頂いて差支えありません。
車内放送チャイムとお休み放送
夜の東京駅は独特の雰囲気があり、旅立つ気分が高まります。
車内はほぼ満席状態のようで、普段はガラガラだというノビノビ座席もほとんど埋まっています。そのため車掌も多忙の様で、まだ発車前の時点で検札が来ました。
こういう特別な列車は発車する時に最も胸がときめきます。
発車直後にサンライズ特有のチャイムと共に自動音声のアナウンスが流れますが、その後に続くはずの車掌肉声のアナウンスは今回ありませんでした。
早速晩餐の開始です。
自力で入手したシャワーカードを使用したのは藤沢を過ぎた頃だったと思います。
相変わらずドライヤーは非力でした。使用後に「洗浄ボタン」を押すとシャワールーム内に激しく水が噴射され、その後脱衣所の足元に強風が噴射されます。
寝台列車特有の「お休み放送」は熱海到着前で、チャイムもなくいきなり流されたため冒頭部分を撮り損ないました。(音量が小さいです)
そして最後の締めは独り飲みで、笹かまぼこをつまみに愛用のスキットルに詰めてきたブラックニッカスペシャルを楽しみました。車内の自販機が売り切れだらけだった前回の経験もあり、今回は東京駅のホームでたっぷりと水を確保しています。
室内の操作盤を使えば車内でNHKのFMを聴くことができます。(意外なほどはっきりと聞こえた)
しかしNHKなど特に聴く気もなかったので、radikoのタイムフリーを利用して昼間聞き逃していた番組を聴いて過ごしました。(静岡県内を通過中でもダレハナや沈金を聴けます)
スマホの充電やPCにとって必須のコンセントはもちろん設置されています。寝たのは静岡を過ぎた頃だったと思います。
一面の霧とおはよう放送
目が覚めたのは姫路を発車した後で、車窓は一面の霧に覆われていました。
「おはよう放送」は岡山到着20分前で、自動放送に続いて車掌の肉声によるアナウンスもあります。それにしても「列車時刻通りに運転しております」という車掌の声には何とも心強いものがありました。
ちなみにサンライズ瀬戸で見た「サンライズ(日の出)」は岡山付近でした。
岡山ではサンライズ瀬戸と出雲の切り離しが行われます。切り離しが完了するとサンライズ瀬戸はすぐに出発してしまうので、ホームで撮影するのは控えめにしましょう。
ちなみにサンライズ出雲の時はコロナ対策で売店が閉まっていましたが、今回は開いていました。
サンライズで渡る瀬戸大橋は格別
岡山を発車するとサンライズ瀬戸はいよいよ瀬戸大橋を目指します。
単線区間が多い宇野線ではゆっくりと走っていましたが、茶屋町を過ぎて高規格路線に入ると時速120㎞くらいまで一気に加速しました。児島でJR四国の乗員に交代していよいよ瀬戸大橋です。
瀬戸大橋は1988年に開通した「世界一長い鉄道道路併用橋」で、上部に4車線の高速道路、下段に複線の線路が敷かれています。設計上は4線を付設可能となっており、その気になれば新幹線用の線路をあと2本敷くことも可能なのだそうです。(写真は岡山行のマリンライナーで撮影)
窓には朝の瀬戸内海の眺望が広がります。
橋の真下の海面もしっかりと見えました。
瀬戸大橋は塩飽諸島の5つの島を橋脚として使用しており、そのような島の様子も見ることができます。
右手奥の大きな島は恐らく小豆島ではないかと思います。
漁をする漁船の姿も見えました。
これまでマリンライナーで何度も通っている場所ですが、やはりサンライズ瀬戸から見る朝日が昇る瀬戸内海の眺望は格別のものがありました。
ちなみに進行方向右手の眺望はこうなっています。上りの線路があるため海が遠くなってしまい、また朝日も見えないため少々物足りなさを感じました。切符の購入時に「進行方向左手の席」にこだわったのはこんな事情がありました。
橋を渡り終えると松山方面と高松方面に線路が分岐します。
讃岐冨士の名で知られる飯野山が進行方向右手に見えてくると「四国に来た」ということを実感します。
サンライズが児島を出てから坂出に到着するまでの動画で、平屋シングルなればこそのモーター音も聞こえます。興奮した私が写真を撮りまくり、右側も撮影するために個室を出たり入ったりする様子もお分かりいただけるかと思います。
高松駅でスイッチバックして琴平へ
琴平延長運転のサンライズ瀬戸は高松駅に約30分間停車します。乗客の大半はここで下車してしまったので、今回ほぼ満席だった原因は延長運転ではなくシルバーウィークでしょう。
高松駅名物の「連絡船うどん」はこの日も閉まっていましたが、営業再開が決まったようです。
高松からはスイッチバックして元来た線路を逆に戻ることになり、先ほど停車した坂出を今度は通過しました。全ての特急が停車する宇多津もサンライズ瀬戸だけは通過します。
いかにも四国らしい田園風景の中を進みます。
琴平はかつてこんぴら参りで大変に賑わった街で、そのため単線の土讃線にあっても琴平駅は重厚な雰囲気を持っています。
琴平駅ではホームの長さより電車の長さの方が若干上回っており、先頭車両はホームからはみ出していました。