道後温泉本館で2019年から続いていた保存修理工事が2024年12月20日をもって完全に終了しました。そのタイミングで松山を訪れ、神の湯2階と霊の湯3階個室を体験してきました。
- 道後温泉の工事が完全に終わった
- 全部で四つの階層に分かれている
- 四つの棟の全てが重要文化財
- 大広間でくつろぐ神の湯2階
- 個室を90分使える霊の湯3階
- 漱石と子規ゆかりの「坊ちゃんの間」
- 皇室専用浴室も見学できる
- 若干ぬるっとしたお肌によさそうな湯
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道後温泉の工事が完全に終わった
道後温泉本館は1894年から1924年にかけて竣工した四つの棟から成り立っており、全ての棟が国の重要文化財に指定されています。100年以上も公衆浴場として市民が日常的に利用してきた木造建築物であり、長年にわたる劣化により大規模な保存修理工事が必要となっていました。
工事は2019年1月15日に着手され、それにより本館の建物は工事用の素屋根で覆われてしまいます。しかし2024年7月11日 からは営業が全面的に再開され、ついに12月20日をもって全ての工事が完了しました。
私はこれまで松山には2回住んだことがあり、それだけに道後温泉には愛着を感じています。工事が終わったら松山に行こうと随分前から考えており、終了のタイミングに合わせて旅してきました。
全部で四つの階層に分かれている
道後温泉本館は「神の湯(かみのゆ)」と「霊の湯(たまのゆ)」の2つの湯から成り立っています。両者は普通車とグリーン車のような関係で、さらにそれぞれが階によって2つに分けられています。
グレードとしては「神の湯1階<神の湯2階<霊の湯2階<霊の湯3階」という具合で、ただ入浴するだけの神の湯1階に対し、霊の湯3階は専用の個室でお茶やお菓子の接待を受けることができます。(霊の湯3階はグリーン車よりグランクラスといった方が正しいかもしれません。)
今回の改修で「霊の湯貸切室」というものが誕生したようですが、個人客には関係なさそうです。
四つの棟の全てが重要文化財
道後温泉本館は1894年にまず神の湯本館棟が竣工し、その後に三棟が増築されました。現在では四つの棟が相互に接続した複雑な構成になっており、1994年に四棟全てが国の重要文化財に指定されました。
神の湯本館棟
正面玄関の左手の建物で1894年に竣工しました。1階が浴場で2階が神の湯の休憩室、3階が霊の湯の個室です。
最上階には振鷺閣と呼ばれる鼓楼が設けられており、6時に6回、12時に12回、18時に6回和太鼓が打ち鳴らされます。その中でも特に朝6時の太鼓は営業開始を伝える貴重な役割を担っており、温泉本館が開業した1894年から続く儀式となっています。
※映像に登場する赤い窓は道後温泉飛鳥の湯のもので、本館ではありません。
又新殿・霊の湯棟
向かって左側の棟で1899年に竣工しました。日本で唯一の皇室専用浴室である又新殿(ゆうしんでん)を設けています。
1階に霊の湯の男湯と又新殿の浴室、2階に「玉座の間」があります。
皇室専用の玄関である御成門もあります。
南棟
向かって左側の棟で1924年に竣工しました。1階に霊の湯の女湯、2階に霊の湯の2階席があります。
玄関棟
1924年の竣工で、本館全体の玄関となっています。
周辺で頂ける御朱印
大広間でくつろぐ神の湯2階
私はこれまでトータルで約4年松山に住んでおり、道後温泉本館にはもう数十回入ってきたと思います。その全てが神の湯1階だったので、今回はもっと上を狙っていました。二泊三日の旅なので初日は神の湯2階、二日目には霊の湯に入るつもりです。
本館に来たらまず正面入り口右手のチケット売り場で希望するコースのチケットを購入します。
そして入り口で靴を脱いで下駄箱に入れ、受付にチケットを提示して廊下を進んでください。(それぞれのコースに応じてどう進めばいいか教えてくれます。)
神の湯1階の場合はここで左に進めば浴室があります。それ以外は突き当りまで進んでください。
ここで階段を上がります。
階段を上がりきった場所で、ここでコース別に案内してくれます。神の湯2階の場合は左へ、霊の湯2階の場合は右へ、そして霊の湯3階の場合はさらに階段を上がります。
神の湯2階の場合はこちらで浴衣を受け取り、再び階段を下りて1階の浴場に行きます。2階には更衣室がないので、着替えは浴場の脱衣所とロッカーを使うしかないのです。ちなみに神の湯ではタオルの貸し出しは有料です。
湯上りは浴衣に着替えて2階席で休憩します。
大広間には窓のようなものはなく、障子を開けるとそのまま外気が流れ込んできました。
2階席ではお茶とお菓子の接待があります。
休憩が終わったら再び1階の脱衣所に戻って着替え、浴衣を返却して終了です。
個室を90分使える霊の湯3階
二泊三日の二日目はいよいよ霊の湯に入ることにします。
霊の湯には個室が8室あり、たまたま5号室が空いていたので3階席を利用することができました。
夢にまで見た霊の湯3階のチケットで、これで個室を90分利用できます。
道後温泉本館で一度に8組しか入ることができない個室ですから、3階への急な階段を上がる際に得も言われぬいい気持ちになりました。
狭い廊下の両側に個室が並んでいます。
私が利用した5号室です。
広さは三畳で、和風旅館の客室のようでした。(部屋によって広さはまちまちのようです。)
5号室の窓からは外部から絶対に見えない神の湯浴室の天井が見えます。
霊の湯では浴衣だけでなくタオルも貸してくれます。神の湯でも霊の湯でも2階席の場合は浴場の脱衣所で着替えなければなりませんが、個室である3階席の場合は室内で着替えることができます。
鍵付きの戸棚もあります。
霊の湯の浴場は神の湯と比べるとコンパクトですが、人数が少ないので伸び伸びと道後の湯を楽しむことができました。(霊の湯だけでなく神の湯に入ることもできます。)
個室に戻ってブザーを押すとお茶とお菓子を持ってきてくれます。
漱石と子規ゆかりの「坊ちゃんの間」
私が利用した5号室のちょうど向かいが「坊ちゃんの間」でした。
1895年に松山に赴任した夏目漱石が正岡子規と利用したといわれる個室です。
皇室専用浴室も見学できる
霊の湯の利用客は日本で唯一の皇室専用浴室である又新殿を案内してもらえます。大正天皇が皇太子時代、昭和天皇が皇太子時代と即位後に利用しているようです。
奥の玉座の間は天皇のみが使用することができます。手前の御居間は皇族と従者がくつろぐための場です。
皇族が入浴着に着替えるための前室です。
前室の向かいに御湯殿があります。この時代の技術では湯を高所までくみ上げることができず、そのため深く掘り下げた浴槽に湯をためていたとのことでした。
若干ぬるっとしたお肌によさそうな湯
道後温泉の源泉は42度~51度で、これらをブレンドして46度で供給しているといいます。湯は無色透明ですがほんのりと硫黄のにおいがしており、若干ぬるっとしていました。皮膚にまとわりついてくる感じで、お肌によさそうな湯です。
浴室の天井に通気口が設けられていてそこから冷気が降りてくるため、露天風呂に近い感覚でした。
シャンプー・コンディショナー・ボディーソープは浴場に備え付けてあります。また脱衣所にはドライヤーもあります。
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